たまがわ No.158 2022.7.1
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 枡野さんは開山されて460年以上の由緒ある曹洞宗建功寺の18代住職。僧侶であり、庭園デザイナーとしてカナダ大使館の庭や寒川神社の神嶽山神苑、ドイツベルリンの日本庭園「融水苑」など、海外でもその手腕を発揮されています。一方若者にもわかりやすい禅に関する著書も多く出されています。 枡野さんがご住職を務める横浜市鶴見の建功寺をお訪ねしました。 文芸をもっても伝えきれないものがあります。所作と所作の間にあるものを大事にする。日本文化は察する文化です。庭も今日と来年とでは違っている。それが成長なんです」と枡野さん。客殿から見る枯山水の石の一つひとつに意味がありますが、それを見る者の心によって変わるとか。自らを律し、万物に感謝し、ムダを省き、生き方を見つめ直すという禅僧としての修行から得られたことがすべて庭園デザイナーとして生かされています。 お寺が積極的に門を開かなくてはと、お釈迦様の誕生をお祝する花まつりの時には近隣大学の相撲部、軽音楽部やアフリカの太鼓ジャンベの演奏、禅カフェや地元農家の採りたて野菜を販売したり、枡野さん自ら焼きソバを作ったりと、お寺を身近に感じてもらえる場を提供しています。また日曜日の朝の坐禅会も行っていますが、「今はコロナ禍のためどちらもお休みで残念なんです」と枡野さん。詳細は下記、建功寺のHPをご覧ください。建功寺HP http://www.kenkohji.jp/k/ 竹林や借景を利用したお庭、そしてご自身が構想し、自ら現地に出向いて選定された木材で立て替えた本堂を案内してくださる枡野さんは、厳しい禅僧のイメージとは違いとても気さくな方でした。 名言が多く、哲学的なピーナッツコミックは、禅の世界と通じる部分がとても多いと、ストーリーやキャラクターのセリフから読み解いて禅の考え方を解説されています。 翻訳をされている谷川俊太郎さんは元ご父兄でもいらっしいます。心をととのえるスヌーピー 悩みが消えてゆく禅の言葉チャールズ・M・シュルツ 翻訳:谷川 俊太郎 監修:枡野 俊明光文社 1,430円(税込)▲建功寺 釈尊成道の庭▲ドイツ ベルリン 日本庭園『融水苑』7 小学校5年生の時、京都旅行で龍安寺などで観たお庭に感銘を受け、中学生の時には既に庭園への興味を持たれていた枡野さん。玉川卒の担任の先生からの勧めもあって見学した学園は、自由な校風だったことや農学部があったことが決めてとなって高等部に進学されました。 「玉川では自由だった。授業をさぼって奈良池に行ったり、仲間とオヤジの家にお茶をしに行ったりもしました。労作は面倒と思う反面、楽しかったし『村のみちぶしん』そのものでしたよ。」 高校生の時、建功寺の客殿を建て直すことになりました。戦争で荒れた庭は造園家の斉藤勝雄さんに委ねられ、そのお手伝いをした経験が、枡野さんの庭園デザイナーとしての出発点になったようです。 大学卒業後、しばらく斉藤先生の元で修行をされ、その後、お父様の後を継ぐべく同じ鶴見にある大本山總持寺で僧侶としての修行が始まりました。はじめは仏教系の大学を卒業していない枡野さんには仏教用語はわからない、おなか一杯食べられない、足を伸ばして寝られないという慣れない生活だったそうです。曹洞宗の修行はきついもので、同期入門の74数名のうち、15人くらいは脱落していったとか。 「日本文化は禅ときっても切れないものです。光と影の変化、うつろいでいくことの美しさ。日本の美しい四季を次世代に繋げること、伝えていくのも役目です。我ら玉川っ子 │ 活躍する卒業生枡野 俊明さん (農学部農学科 1975年卒業) Shunmyou Masuno曹洞宗 徳雄山建功寺住職 庭園デザイナー 多摩美術大学教授今日と来年とでは違っている。それが成長

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