たまがわ No.156 2020.7.1
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自の政策を進めていたマレーシアの発展理論とボルネオ島の先住民族の集落の調査研究を行ない、政治経済の推移と住宅の変遷を重ね合わせることで今私たちに必要な建物のカタチを模索し現在に至っています。 「安心できる心地よい居場所づくり」が日々の仕事です。 例えば「住まい」であれば、世界で唯一の安全地帯と定義して、柔らかい何かに包まれているような心地よい空間を作るように心がけています。空間構成や素材を吟味しながら個々の案件に沿いながら作り上げていきます。 手を加えながら100年200年の単位で長く使い続けられる構造、エネルギーを有効に使える構成、地場の材料を使うことで得られる調和といった物理的な要素や機能から得られる安心感に加え、「愛着」も長く使い続けられる大きな要素であり心地よさの源でもあると考え、デザインに楽しさや遊びのような色気をもたせたり、建物を利用する方々に施工時に一緒に作業をしていただいたりしています。 STREAM Hall 2019の建設にあたっては建物中央に配置された吹抜け空間を玉川の丘に見立て専門分野の異なる方々が交流できる心地よい居場所になるように計画しました。私自身研究室に籠りきりだった経験を踏まえ、心身の健康とともに研究の成果が得られるよう玉川の伐採材の利用や緑化等によって室内環境を整えました。玉川での思い出 「神なき知育は知恵ある悪魔をつくることなり」という言葉が大学8号館(旧工学部校舎前)に掲げられています。丘めぐりか春の運動会の時だったか記憶は定かでなはいのですが、校舎前にあった庭園で遊んでいる時に目にしたことを覚えています。小学部低学年の時でした。おそらく当時言葉の意味は理解できていなかったと思うのですが、不思議とそれ以来心に刻まれています。 そして社会人になってから難しい判断をしなければいけない場面でこの言葉に支えられ助けられています。これからの夢 目の前の目標・夢はこれまでの仕事を地道に続けていくことです。提唱から一般化・定着までには数十年の月日を要すると心得て、粗悪なものを提供することのないよう地道な活動を大切にしていきたいと思っています。 林業・鉱業・農業・漁業・酪農といった一次産業が有効に機能する社会づくりの一端を担い、それを建物や環境に反映させていきたいという壮大な思いもあります。後輩へ一言 日本中に玉川の卒業生がもっと散らばってくれたらと思っています。興味や疑問を持ったら素直に向き合ってもいいというおおらかな空気の中で野山を駆け巡って育った、豊かな感性がたくさんの所に届いたらいいなと思っています。山田 能資さん 文学部英米文学科2004年卒大蔵山スタジオ株式会社 代表取締役世界中でこの大蔵山でしか産出しない伊達冠石という安山岩を採石し、作家、デザイナーへの原石の供給と、石の味わいを生かした墓石、インテリア、エクステリア製品を展開している。仕事のこと 大学では語学と経営学を学び、その後英国へ留学いたしました。英国に着くや否や大英博物館の図書室にこもって語学の勉強をしつつ作品集制作に没頭。10ヶ月後に無事セントマーチンズ芸術大学、ウェストミンスター大ほか2校より入学許可をいただきました。セントマーチンズ大ではグラフィックデザインを専攻し、最終学年で手触りや質感がより強く感じられるイラストレーションを学びつつ、ヨーロッパ中を旅して帰国しました。 家業の石材を世界的に最高のステージへと昇華させていくことが私の使命だと感じております。どこで、誰と、どのように弊社の※伊達冠石が扱われるのかを慎重にディレクションしながら、自社のウェブサイトや製品についてもストーリー性を意識した経営を行っています。玉川での思い出 学園を初めて見学に行った時、敷地の美しさ、丘陵のある牧歌的な空気感に心を打たれました。会社の所在地である大蔵山写真左から梅園さん、坂上さん、スタッフの植田さん6我ら玉川っ子

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