会員より

牧 佑弥さん(教育学部教育学科2018年卒)より Vol.2

 現在、世界一周の旅に出て約6ヶ月が経ちました。今は、アラスカンマラミュートの世話と、犬ぞり犬としての訓練方法を学ぶため、ノルウェーの田舎町に3週間ほど滞在しています。
 この100日間では、南米→カリブ海→アメリカ(東海岸)→ヨーロッパの4つのエリアを旅してきました。その間で特に印象に残ったことといえば、ブラジルのファベーラ(スラム街)です。
 私が訪れたのは、リオデジャネイロの中心部から南西に10kmほど離れた’’ロシーニャ’’というファベーラで、ここはラテンアメリカ最大のスラム街とも言われており、この一帯に10万人もの人々が生活しています。
 私が駅を出て最初に感じたことは、良くも悪くもとても活気があるということ。そして小高い丘の斜面に家が密集して建っているということ。実際にファベーラの中に入ってみると、盗電を繰り返した結果、異常なほどに枝分かれした電線。油や泡が浮き浄化されることのない生活排水。虫がたかり凄まじい異臭を放つ膨大な量のゴミが目立ちました。
 危ない雰囲気を感じながらも脇道に足を進めてみると、ギャングと思われる方々が口笛を吹きながら、まるで獲物が来たかのように僕のことをじっと見てきます。脇道に入って50mくらいの所で、ライフルとトランシーバーを持ったギャングの守衛さんに声をかけられて、「この先に行くなら金を払え」と。入場料支払うと、守衛さんが座ってる木箱の中を見せられて「何か買っていかないか?」と。。。そこにはたくさんの粉や錠剤があり、「コカイン・マリワナ」などと言っていたため、ドラッグということが分かりました。また、持っていたトランシーバーは、警察の動きを仲間内で連絡するための物のようで、脇道の入り口の見張り役と随時交信しているようでした。時々、トランシーバーからパトカーのサイレンの音が聞こえると一気に空気が張り詰めて、銃を握り直している様子が印象的でした。
 一見、これだけを聞くと悍ましい場所と聞こえるかもしれませんが、こんな場所でも普通に人々の生活があります。スーパーはもちろんのこと、車の修理工場、美容院、ペットショップ。そして、学校もあります。ゴミ山の傍で子ども達は無邪気に走り回って、カメラを向けると素敵な笑顔も見せてくれました。
 日本で育った僕にとっては、ギャングも銃もドラッグもあり得ない日常ですが、ここに生まれ生活している人からすればある意味「当たり前」。貧困が悪事を招くのか、この環境故に貧困から脱出できないのか…?ただ、各国の貧困街を回って共通して言えることは’’貧困’’ と ’’ゴミ山’’ にはとても強い相関がある気がしました。
 「当たり前」というものはどこの地に生まれたか?その地や環境によって大きく異なります。そして、これまで日本で育った僕はとても安全で恵まれた「当たり前」の中に居たと実感させられました。それと同時に、改めて世界は広い、「当たり前の日常」に感謝すべきと思いました。


   今回訪れたロシーニャのファベーラ


   違法分電を繰り返した電柱


      異臭を放つ膨大な量のゴミ


      ファベーラに佇む学校

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